流行通信
1999年7月−9月
学校の怪談

 ある小学校の生徒が、夜、忘れ物をとりに学校に入ったところ階段が13段ありました。次の日に数えると12段しかありませんでした。

 ある小学校では、プールの第3コースで男子生徒がおぼれ死にました。以来、第3コースで泳ぐ人がいると、何者かに足を引っ張られます。

 また、別の小学校では、トイレの戸のそばに青白い顔をした男が立っていて、トイレに入ろうとすると「赤いマントがほしいか、青いマントがほしいか」と聞きます。「赤いマントがほしい」と答えると、ナイフで切りつけられて血だらけになって死に、「青いマントがほしい」と答えると体中の血を吸われ、真っ青になって死にます。

 さらに別のある学校では、地下室によくピエロが出ます。ピエロを見た人は、20秒以内に地下室を出ないと殺されます。

 夏になると日本の小中学校では、生徒たちの間でだれからともなく怪談話が始まり、教室は小さなパニックの場になったりもします。学校を部隊にした怪談話が、主に小中学生を中心とする口コミのネットワークで全国にひろがっているからです。このような現象が特に目立つようになったのは10年程前ですが、いまだに衰える様子はありません。

 1985年に、当時中学校の先生をしていた常光徹さんは、都会で生活している人々の間に、うわさ話や世間話として語り継がれている話をいろいろと集めてみようと思い立ちました。放課後にまず自分の教え子の中学生から話を聞きはじめたところ、驚いたことに最初の10日間で160を超す早さで話が集まりました。しかもその大部分が学校にまつわる怪談や不思議話でした。

 常光さんはその結果を専門誌に発表するかたわら、いくつかの話を子どもたちにも読めるようにやさしく書き直し、1990年に『学校の怪談』として出版しました。これがベストセラーになったことから、“学校の怪談”ブームは日本中に広がり、全国の小中学生が独自の「想像力」をさらに発揮するようになったのです。この本は翌年からシリーズとして出版され、現在までに9冊の本が出ています。また1994年のテレビ版に続き1995年には映画にも登場し、今年の夏にはシリーズ第4作が公開されました。

 このような話は実際にはあり得ないことですが、子どもたちは怪談で冷や汗をかいたりゾ〜ッとすることによって、暑くてジメジメする日本の夏をのりきるのです。


写真:常光徹さんの『学校の怪談』シリーズ(講談社

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