流行通信
1998年4月−6月

ゴジラ

 遠く南太平洋のフランス領ポリネシアの島で、核実験をきっかけに巨大怪獣がよみがえった。怪獣はタヒチ、ジャマイカを経てニューヨークにやってくる。時速480キロの高速でつっ走る怪獣は摩天楼のビル街を暴れ回り、ウォール街やセントラルパーク、ブルックリン橋など手当たり次第に破壊する。

 これが最新のハリウッド映画『ゴジラ』のあらすじです。今年の5月にアメリカとカナダで公開され、大きな話題を呼んでいる作品です。ところが、30年も前にゴジラがすでにニューヨークに現れていたことを知る人はあまりいないでしょう。『ゴジラ』は日本で製作され、1968年に上映されたシリーズ9作目の『怪獣総進撃』は、20世紀末にゴジラをはじめ11種類もの大怪獣がニューヨークなど世界各地に出現するという設定でした。

 日本は映画の特殊撮影(特撮)が得意です。ゴジラは日本が誇る特撮映画の大スターなのです。44年前の1954年に本多猪四郎(ほんだ いしろう)監督、円谷英二(つぶらや えいじ)特撮監督によって第1作目が誕生し、95年までに22本が製作されました。

 1作目の『ゴジラ』では、太平洋で眠っていた怪獣ゴジラが水爆実験の影響で目覚めます。よみがえったゴジラは海を北上して東京に上陸し、銀座の商店街、国会議事堂などを破壊します。戦車も戦闘機も歯が立たない、というものでした。この第1作は当時国内で961万人もの観客を動員しました。56年にはニューヨークでも上映され、大ヒットしました。

 ハリウッド版ゴジラは7月11日、日本に「上陸」しました。全国の映画館の2割にあたる約400館という史上空前の規模でスクリーンに登場しました。ゴジラがまた日本を襲っているのです。

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