流行通信 2002年10月−12月 |
バウリンガル
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「げんき、いっぱいだよ!」「なんかきぶんがわるいなあ!」「ねえねえあそんでよ!」……と、犬の気持ちを人間のことばに翻訳してくれる機械が、玩具メーカーのタカラから売り出されました。その名も「バウリンガル」。大好きなペットの気持ちがよく理解できると言って、子どもも大人も、彼らとのコミュニケーションに夢中です。 小型犬日本スピッツを飼っている13歳の男の子に試してもらいました。大喜びで飛び跳ねている愛犬に飼い主が近づくと、興奮気味にひと声「キャン」。バウリンガルの画面には(ケンカするきなの?)。走り回る犬を追いかけると「キャキャキャン」(ウー、やる気かい?)。表示される犬のことばは意外に乱暴でおどろいてしまいますが、実際はじゃれているのです。寝そべった体をさすってやると「キュ〜ン」(やさしくもっとしてして。)といった具合。「かなり当たってる」と飼い主はにこにこ。「うちの犬がますます可愛くなりました」。 この「犬語翻訳機」のしくみはこうです。小さな送信マイク(幅約8センチ、重さ36グラム)を犬の首輪につけると、鳴き声を拾って無線で本体に送信します。受信した本体はその鳴き声を解読して、6種類のうちのどの感情にあてはまるかを判定し、約200種類の出力パターンのなかからもっとも合った表現を液晶画面に文字とイラストで表示してくれます。50種類の犬種に対応しているほか、その他の犬種や雑種の場合は体の大きさや鼻の長さによって6つのタイプから選べるので、その犬種に合わせて鳴き声を分析してくれます。開発には、動物行動学の専門家でもある獣医の協力も得て、2年かかったそうです。 ほかにも、健康チェックモードで犬の健康状態をアドバイスしてくれるという、うれしい機能もそなえたバウリンガルは、9月に発売されるとたちまち3万個が売り切れるという人気ぶり。10月にはアメリカ・ハーバード大学系の科学誌が主催するノーベル賞のパロディー版「イグノーベル賞」の平和賞を贈られました。受賞理由は「人間と他の生物の平和共存に貢献した」こと。さらに11月にはアメリカの「タイム」誌が発表する2002年の「最高の発明品」42点の一つにも選ばれました。この勢いに乗ってタカラでは年度内に30万個、来年度は60万個の売り上げを見込んでいます。さらに来年6月からは韓国を皮切りに海外でも販売する予定です。 一口に犬といってもいろいろです。ラブラドール・レトリバーなどの大型犬はあまり鳴かないし、小型でもなかには“無口な”性格の犬もいます。バウリンガルを手に入れたからといって、犬をむりやり鳴かせるようなことをしてはいけません。ぽつりとひと言、低い声で、「いいかげんにしろよ!」と犬に言われたら、どうします? 写真:首輪に取りつけたマイクが犬の声を拾うと、本体の画面に訳語が表示されます。(© TAKARA Co., Ltd. 2002) |