流行通信
2002年7月−9月
アカペラ

日本の若者は今、アカペラで盛り上がっています。アカペラとは、楽器を使わずに無伴奏で、つまり人間の声だけでつくる音楽のことです。語源はイタリア語で、「教会風の」という意味ですが、4,5人が声を融和させてゴスペル・ソングを歌うものばかりではありません。今日本で流行しているアカペラはもっとずっと親しみやすくて、R&Bからラップまで、さまざまなジャンルの音楽を美しいハーモニーで歌いあげます。

え、ポップスやロックは楽器なしでは歌えない、ですって? ご心配なく。ちゃんと楽器の音も声でつくります。ドラムズやタンバリンなどのパーカッションの音は「ドゥン ドゥン ドゥン」「ズンズンズンズン」と本物そっくりの声を出してリズムを刻みます。ボイスパーカッション、略してボイパといいます。ベース担当のパートもあって、これらが入ると、アカペラもノリのいい踊りやすい音楽になるのです。特にボイパはむずかしいパートですが、実はこれが「かっこいい」と人気の的のようです。

アカペラ・ブームのきっかけとなったのは、昨年3月、早稲田大学出身の5人組、ゴスペラーズが歌ったシングル「ひとり」でした。デビューから7年目のヒットでしたが、発売後半年で売り上げ枚数は60万枚を超えました。

続いて、テレビのあるバラエティー番組に「ハモネプ」という視聴者参加コーナーができました。アマチュアの若者グループが、さまざまなジャンルのヒット曲を、自分たちなりの編曲と演出で歌って競うという企画です。

この番組を見て多くの中高生がグループを結成、全国から応募が急増しました。それに伴い、出場者のレベルも上がっていきました。去年の7月と12月に行われた2回の全国大会からは、「チン☆パラ」「RAG FAIR」「INSPi」の3組がメジャーデビューし、前2者はCDがオリコンでベストテンにチャートインするほどの人気者になっています。

今年に入ってからも2月に「Baby Boo」、6月に「AJI」、8月には「チキン・ガーリック・ステーキ」など、新人アカペラ・グループが続々と登場しています。テレビのCMでもアカペラが聞かれるようになりました。

さらに、ハモネプの第3回全国大会が今年8月25日に行われ、4月から始まった地方予選に応募した約5,000組のなかから勝ち抜いた18組が出場しました。応募チームのうち6割以上が小学・中学・高校生のグループだったそうです。

アカペラの魅力は「ハーモニーがうまくそろうとすごく快感で、仲間もできる」ということで、各地でコンテストなどのイベントが開かれたり、学校にサークルができたりしています。なかには「楽器が要らないからお金もかからない」と、手軽に始められることに魅力を感じる生徒もいるようです。

写真:「カリスマ」は中学生4人、高校生1人のアカペラ・グループです。(Y. Hayashida)

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