流行通信
2002年4月−6月
宇多田ヒカル

日本で相変わらず人気の高い歌手の宇多田ヒカルが、今年になって一段と注目を浴びています。

1998年12月にシングル「Automatic/time will tell」でデビューしたとき、日本のマスコミから「彗星のように現れた超大型新人歌手」ともてはやされました。16歳のニューヨーク生まれの実力派少女歌手が、自作のR&Bサウンドの曲をひっさげて突然現れたのですから。

Hikkiの愛称で知られる彼女は、「日本人離れしたフィーリングが好き」「とにかくみんないい曲。リズム感も最高」と、大人からも子どもからもたいへんな人気です。99年3月に発表した1枚目のアルバム『First Love』は、およそ900万枚もの売り上げを記録しました。この記録は3年たった今でも、だれにも破られていません。

デビュー当時まだ高校生だった宇多田は、学業との両立のためテレビにはほとんど出ませんでした。はじめてステージ上で日本のファンの前に姿を見せたのは、99年4月に大阪と東京で行われたライブでした。このとき初めてあこがれの歌手を生で見た女子中学生たちは、「よかったー」「歌もチョーうまい」とだれもが大喜びしました。

最近では、5月に11枚目のシングル「SAKURAドロップス/Letters」、6月には3枚目のアルバム『DEEP RIVER』を発表しました。「SAKURAドロップス」は彼女独特のハスキーボイスで、切ないバラード調の曲をやわらかな声で歌った名曲で、6月まで放送されていたテレビドラマに主題歌として使われていました。後者はシングルとしてヒットした曲を一部含めたオリジナル盤ですが、これまでのR&B色は薄くなった反面、表現力がより豊かになった力作だとの評判です。

音楽以外でも注目を浴びています。自作のイラストの猫キャラクターCHUICHIが次世代携帯電話のテレビCMで使われたことが話題になっています。CHUICHIというのは、彼女が幼なかったころに父親が飼っていたシャム猫の名前で、父親から話を聞き、そのイメージをもとにパソコンで描いたものです。彼女のCDやホームページに登場したり、ぬいぐるみやTシャツなどのキャラクターグッズが発売されて、すでに人気者になっています。CMではCHUICHIが主人のいない部屋で携帯電話をあやつり、音楽や動画を楽しんでいるというコミカルな設定で、BGMには宇多田のヒットシングル「traveling」のリミックスバージョンが採用されています。

歌以外の分野での活躍としてはこのほかに、インターネットのブロードバンドサイトで2001年8月から2002年2月まで配信された手塚治虫原作のアニメ『BLACK JACK』に、声優として出演しました。彼女は天才医師ブラック・ジャックの助手、ピノコの声を担当しました。

2000年秋にはアメリカのコロンビア大学に入学しましたが、翌年1月には休学し、それ以来、歌手としての活動に専念しています。そして今年2月にはアメリカの大手レコード会社と専属契約を交わし、いよいよ来年には全米デビューがほぼ決定となりました。歌に作曲にますます磨きがかかり、幅広い年齢層から支持される宇多田ヒカルは、これからは世界的な歌手としてさらに活躍してくれることでしょう。

写真:シングル「SAKURAドロップス/Letters」の表紙写真。(© TOSHIBA-EMI LTD.)

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