流行通信 2001年7月−9月 |
千と千尋の神隠し
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小学生の少女が主人公の映画が『タイタニック』を抜いて新記録を作りました。今年の夏休みに日本全国公開された長編アニメ映画『千と千尋の神隠し』が、空前の大ヒットとなったのです。 小中学生に人気の高い宮崎駿監督の4年ぶりの作品とあって、映画館の前には初日から大行列。観客の数(観客動員数)ではそれからまもなく日本映画の記録を抜き、さらに映画の売り上げ(興行収入)でも、たった56日で邦画のトップに立ちました。観客動員数、興行収入ともそれまでの記録だったのは、同じ宮崎監督の4年前の作品「もののけ姫」で、それも約1年間かけて作った記録でした! 10歳のごくふつうの少女千尋は、両親と引っ越しの途中、人間が入ってはいけない「不思議の町」に引き込まれてしまいました。店の食べ物を勝手に食べた父と母は豚にされてしまいます。千尋はこの町で生き抜き、両親を人間に戻すため、町を支配する湯婆婆(ゆばーば)という魔女のもとで働くことになりました。そこは大きなお風呂屋さんで、夜になると日本に住むやおよろずの神々や妖怪たちが朱塗りの橋を渡って疲れをいやしにやってくるところです。 湯婆婆は千尋が働く条件として、彼女の名前さえも奪い、千に変えてしまいました。自分の本当の名前を忘れたら元の人間の世界には戻れません。両親がいなくなり、突然ひとりぼっちになってしまった千尋は、元の世界に戻れるのでしょうか。それは映画を見てのお楽しみです。 実は日本国内で公開された外国映画も含めると、観客動員数、興行収入とも日本の最高記録は1997年に公開されたアメリカ映画『タイタニック』でした。『千と千尋の神隠し』は公開69日目ですでにこの観客動員数を抜いており、さらに114日目の11月10日には興行収入でも新記録を達成しました。来年のお正月以降も、ひきつづき上映される予定です。 映画を見て感動した少女から監督のもとにこんな手紙が届きました。「はじめは消極的だった千尋がどんどん強くなっていくのがわかりました。私もぜひ宮崎さんの作品に出てみたいなと思っています。」 そんな宮崎ワールドに少しだけ入りこめる世界が10月1日にオープンしました。宮崎監督ひきいるスタジオジブリが手がけた、「三鷹の森ジブリ美術館」です。館内のあちこちで宮崎アニメのキャラクターと出会えるばかりではありません。ここでしか見られないオリジナルアニメも上映されていて、その映写機がガラス張りの部屋に入っているため、映写の仕組みも見ることができます。アニメ制作過程を順を追って展示している5つの小部屋も見のがせません。アニメファンならすぐにでも出かけていきたいところですが、入場券は日時指定の完全予約制になっています。 写真:『千と千尋の神隠し』のポスター。(© 2001 二馬力・TGNDDTM) |