流行通信
2001年4月−6月
ベイブレード

 「3、2、1、ゴー・シュート!」。今年に入って、こんなかけ声とともにがん具店や街角で輪になって「戦う」小学生の姿が急に目立ちはじめました。「ブレーダー」と呼ばれる彼らは、直径約40センチのすり鉢状の格闘場「スタジアム」で、互いのプラスチック製のコマを回してぶつけ合っています。コマ同士の戦いは激しく、ときに火花さえ飛ばしています。相手のコマをはじき出したり、少しでも長く回したりしたほうが勝ちというゲームに夢中になっているのです。

 このベイブレードと呼ばれるコマの、どこにひかれるの? ときくと、「自分なりに改造できるのがいい」「いろいろなコマがあるから対戦が楽しい」という答えが返ってきました。「もう50個以上集めてる」という子もいます。

 このコマは、高さ2〜6センチ、直径5〜10センチの円盤形をしていて、色や柄はさまざま。ビットチップ、アタックリング、ウェイトディスク、スピンギア、ブレードベースと呼ばれるベイブレード独自の5つのパーツから構成されていて、この組み合わせを替えることにより、攻撃型、防御型、バランス型と、好きなように改造できることが大きな特徴です。

 発売は1999年7月。ほぼ同時に、漫画雑誌にこれで遊ぶ少年らを主人公にした漫画が連載され、ゲームボーイ用のゲームソフトも発売されました。しかしブームに一気に火がついたのは今年1月、テレビで放映が始まってからでした。これ以降、メーカーには注文が殺到して生産が追いつかず、全国のがん具店やスーパーマーケットなどで売り切れが続出しました。買うにも、なかには3時間も並んで買った人もいます。

 実は日本には昔から「べいごま」というコマがありました。17世紀(江戸時代初期)から子どもの遊びとして人気を得てきました。はじめは巻き貝の殻の中に溶かした鉛や砂を入れてつくっていましたが、20世紀に入って(明治時代末期)鉄を型に流しこんでつくられるようになりました。しかし戦後に新しいゲーム機などが登場するようになると人気がなくなり、今ではべいごまをつくる工場は日本中でたった1軒となりました。

 べいごまは、空きだるなどにござをかぶせて真ん中をへこませ、その中でこまを回し、相手のこまに当ててはじき出したほうが勝ちというルールでした。今のベイブレードと同じです。しかしコマの回し方は違っていて、長さ60センチほどの綿ひもを巻いて放り投げるようにして回しました。べいごまには心棒がないので、ひもを巻くのはとてもむずかしいのです。これに対してベイブレードは、シューターと呼ばれる発射器具を使って簡単に回すことができますから、だれでもすぐに回して楽しむことができます。

 このベイブレード人気の影響で、「絶滅の危機」におちいっていた本家のべいごまも人気が復活してきました。日本唯一のべいごま工場も、注文が以前の約2倍に増えたそうです。学校も課外活動でべいごまが取り入れられています。なかには「べいごま全校大会」を開く学校さえ現れたほどです。新しく登場したコマは、伝統的なコマとともに、これからも多くのファンを獲得していくでしょう。

写真:(上)いろいろな種類のベイブレードやシューターがあります;(下)スタジアムも、攻撃型など数種類の中から選べます。(© HUDSON SOFT / TAKARA・ベイブレードプロジェクト・テレビ東京)

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