流行通信
2001年1月−3月
吉田兄弟

 現代の日本の若者を象徴する茶髪に、伝統的な紋付き袴(はかま)姿で二人が激しく演奏している音楽は、まるでロックのような迫力です。彼らの奏でるダイナミックな音色が今、日本の若者や子どもたちを引きつけています。

  良一郎(23歳)と健一(21歳)の吉田兄弟が弾いている楽器は、津軽三味線といいます。代表的な日本の伝統楽器である三味線の一種ですが、この青森県津軽地方独特の三味線は一回り大きく、強いアクセントを付け、かき鳴らすように弾くのが特徴です。

 二人は津軽三味線の伝統的奏法を守りながらも、ちょっぴりギターっぽく演奏したり、ポップス調のビートをきかせたオリジナル曲を弾いたりしているため、聴くほうは伝統楽器が奏でる音楽ではなく、まったく新しいものに思えるのです。1999年11月に発売された最初のCDアルバム「いぶき」は、現在までに9万枚を超えるヒットとなりました。三味線のCDは1年間でせいぜい5千枚が売れる程度といわれていますから、これは驚異的な数字です。

   二人の挑戦はそれだけではありません。外国の民族楽器を取り入れたり、ジャズとのセッションもおこなっています。2000年11月に出た2枚目のアルバム「MOVE」では、全8曲中3曲でペルーの民謡楽器カホン(木の箱に穴を開けた形の打楽器)と、別の1曲では膝の上に横たえて片手で打つ日本の太鼓(おおつづみ)と共演しました。このアルバムも大変に好評で、売り上げはすでに7万枚を突破しています。また、アルバムには入っていませんが、モンゴルの馬頭琴(ばとうきん)という楽器と共演した曲もあります。「今後はヨーロッパの音楽をさらに取り入れたいですね。スペインのフラメンコやギターとのコラボレーションに興味があります」と健一は言っています。

 日本では2002年度(来年春)から中学校の授業で和楽器が必須になるため、それに向けて学校が開く演奏会に招かれることも多くなりました。若い人たちに津軽三味線を身近に感じてもらいたいという二人は、そのような演奏会には進んで参加するようにしています。どこの学校へ行っても、和楽器ははじめて聴くいう生徒が多いが、みんな真剣に聴いてくれるそうです。

 兄弟でも性格も音楽性も違うという二人は、ソロでは個性を出し、合奏では弟が迫力、僕は味を出すなどして工夫しているそうです。「これからは民謡をどんどんアレンジして、若い人に伝えていきたい」と良一郎は夢を語っています。今後とも二人の活躍が楽しみですね。


写真:(上)二人は伝統的な袴姿がよく似合います;(下)吉田兄弟が演奏しているようすは、まるでロックミュージシャンのようです。(© ビクター伝統文化振興財団)

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