流行通信
2000年10月−12月
浜崎あゆみ

 ふしぎなことに日本のポップスの世界ではこの数年間、目を見張るような男性ソロアーティストはなかなか誕生しません。それに対して女性では、宇多田ヒカル、aiko、倉木麻衣、小柳ゆき、椎名林檎、Misiaといった実力あるアーティストが何人も生まれていて、小中学生にも大変な人気です。そのなかで今いちばん目立っているのが浜崎あゆみです。

 1998年4月に歌手としてデビューした彼女は、高音を生かした独特の声と雰囲気で一躍大勢のファンを獲得しました。これまでにシングル20枚、アルバム8枚(うち5枚はリミックス・バージョン)をリリースし、そのほとんどが100万枚以上を売り上げています。2000年秋に発売された3枚目のオリジナル・アルバム「Duty」は、すでに300万枚近く売れました。

 「あゆみ」を短縮して「あゆ」と自称する彼女は、飛び抜けたファッションセンスでも注目を浴びています。「ありのままの自分を表現」するためにステージ衣装も自分でデザインするという彼女は、そのために中学生・高校生にとってのファッションリーダー的存在にもなっています。彼女のステージはほぼ1曲歌うごとに衣装を変えるため、さながら「浜崎あゆみファッションショー」(本人がそう言っている)となっています。見終えた人たちに感想をきくと、「羽根衣装とミニパンツがすてきでした」「黒のワンピースとカウボーイハットにあわせたブーツにひかれました」と、歌ばかりでなくやはりファッションにも強い印象を受けているようです。

 すべて自分で書いているという彼女の詞も「ありのままの自分を表現」しています。「嘘は書けない、想像の世界はだめ。自分の体験や友だちの体験したことなどを客観的にとらえ、正直な気持ちをことばにしたい」気持ちで詞を作るそうです。はじめて出演した携帯電話のテレビCMで、アンドロイドを思わせる近未来的コスチュームで注目を浴び以来、いつもファンの目も楽しませてくれる彼女ですが、その印象とはうらはらに詞には心の闇や孤独が繰り返しつづられています。「外見や曲調に似合わない歌詞の深さに共感しました」というファンも多く、彼女の歌詞を分析するホームページもいくつか開かれているほどです。

 この多才なポップスシンガーは、歌唱力、容姿、ファッション、歌詞でこれからもますます多くのファンを引きつけていくことでしょう。


写真:シングル「ネバーエバー」の表紙 。(エイベックス株式会社)

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